降谷零のゼロの日常ことゼロティ7話

安室透の女になった私は早速本誌派になり、コナン本編とゼロティを全力で楽しんでいた。

純黒の降谷零は対赤井モードに切り替わっていて血の気が多くなっていたとても珍しい状態で、執行人の降谷零がこの人の本質なのだと思っていた。

 

……が、ゼロティーで色々考え直すことになった。

 

ここで、便宜上ではあるが、降谷零という人間の飾らない部分、本質とも言うべき人格を『ゼロ』と呼ぶことにする。

ゼロと接することができたのは、景光君を筆頭にした同期の友人達、それに明美ちゃんぐらいだっただろう。

 

公安警察の降谷零は、ゼロがイメージして作り出した『最強の警察官』である。

頭が良く、腕も立ち、上司としても優れていて、部下を大事にし、任務を絶対に遂行するスーパー公安警察である。

格好よすぎる立ち居振る舞いの全てが『最強の警察官』としての演技だ。

 

黒の組織のバーボンは、降谷零がイメージして作り上げた『悪の組織の有能な探り屋』である。

頭が切れて、ミステリアスで、仕事柄もあるが単独行動を好み、するどい牙を隠し持つ。

 

私立探偵の安室透は、バーボンがイメージして作り上げた『人に好かれる青年』である。

いつもにこにこ笑っていて、誰にでも親切で、どこにひょっこり顔を出して首を突っ込んでも許される、愛すべき青年だ。

 

ゼロティを読む度に、ゼロという人間はトリプルフェイスのどれに近いのだろうかとちまちま修正を続けていた。

 

バーボンは、ベルモットの話を聞きながらフランベのことを考えたりはしない。

降谷零は、料理が楽しくてうっかり作りすぎてしまうことはない。

 

こんな風にキャラに合わない部分をチェックしていくと、ゼロは安室透に近いのかもしれないと思うときがある。

 

最初から公安警察を目指し、善も悪もその身に抱え込む覚悟があったのではなく、元々は『みんなを守るお巡りさん』でありたかったのかもしれない。

誰かのフォローをそっとすることが得意な、あまり表にでるタイプではないのかもしれない。

 

ゼロティでゼロが見られる度に嬉しくなっていた私に、7話がぶつけられる。

 

まっ、待って、待って!

執行人やゼロティで見てきた降谷零は、圧倒的光属性で、そしかい(組織壊滅の略、覚え立ての専門用語を使いたいお年頃)後も公安警察としての仕事に励みそうな、そういう志の高い人……だと思っていた。

多分、降谷零としては正しい。しかしゼロは違う。

 

降谷零なら、公安警察の潜入調査官として、自分の身元が明らかになるような写真は絶対にもたない。潜入前に、データすら全部捨てたはずだ。

それでも暗号化されたフォルダに警察学校同期の友人の写真を残した。

 

これは降谷零ではなく、ゼロとしての行動だ。

 

ゼロは友人を惜しみ、懐かしむ気持ちがある。

そしてときには黙って眺めてしまうことがある。

そしてゼロは夢の中で、友人達が絶対に言わない台詞を言わせた。彼らなら『こっちにまだ来るなよ』と言うのに、真逆なことを言わせた。

あの台詞は、ゼロの言われたい言葉だ。そしてゼロの本心の欠片だ。

ゼロはひとりぼっちだ、ときどき寂しくなる、友人に会いたくなる。

亡くなった友人達のところへ行きたがってしまうことを、友人に『仕方ないな』と許してほしがっている。

 

ゼロは起きたとき、『ハッ…』と自嘲した。

最後まで自分を心配してくれた友人の気持ちを夢の中で冒涜してしまったことに対する申し訳なさ、自分の弱さへの嫌悪感、そういうものが滲み出ていた。

 

前の記事で赤井秀一にとっての降谷零は『生きる』の象徴であると書いた。

それは多分正しい。

でも降谷零とはちがい、ゼロは安室透よりの人間で、安室透にはないどろりとした黒い闇を抱えている。

ゼロは降谷零になりたがっているのかもしれない。でもきっとなれない。夢がそれを証明している。

 

ゼロティ7話を読んだ乙女達は、誰だって『降谷零は幸せになって!救われて!』と思っただろう。勿論、私もだ。

しかし、ゼロを支えてやることができる人間はみんな死んでいる。

死んでいるからこそ、彼は闇を抱えてしまった。

なのでもうこう思うしかない。

 

赤井秀一さん、どうか、どうかゼロのお友だちになってあげてください……!

 

(無理かな……うーん、無理かな……飲み友だちぐらいなら……ううーん、でも元ライだし、腐れ縁ではあるし、和解後ならいける……か!?)

 

 

どうでもいいベルモットとバーボンの関係について。

ベルモットがお風呂から電話してきてるのに、梅昆布茶ってマジレスしてるバーボンは、バーボンとしてのキャラに合ってないんじゃないだろうか……。

ときどき、降谷零とバーボンと安室透に天然なところがぽつぽつ見えていて、ゼロはもしかしたらそういう子なのかもな~~~!と喜ぶ私がいます。

でも、バーボンが梅昆布茶マジレスするから、ベルモットが安心してパシ……いえ、運転手としてかわいがっているんだろうなと思います。同時に「あなた男として大丈夫なの?」って心配してくれそうなベルモット、バーボンのねーちゃんだね……。

赤井秀一はなぜ降谷零にスコッチ自決の件で嘘をついたのか

スコッチ自決のあと、ライは現れたバーボンに、スコッチを殺したのは自分だと告げた。

何故このような嘘をついたのか、しばらく悩んでいたのだが、ポイントは「ライのNOCバレ」と「バーボンの公安バレ」なのではないだろうか。

 

まずはライの方から。

ライは赤井秀一に戻った際、降谷零に電話越しで「NOCであることを疑っていた」という発言をする。

逆を言えば、バーボン=ゼロというあだ名=降谷零がイコールで繋がるまでは、バーボンがNOCである証拠は一切なかったのだろう。

スコッチ自決のとき、ライはバーボンが黒の組織の一員ではないと言い切れなかった。

これを踏まえて、あのときのライの行動を振り返る。

 

ライはスコッチがNOCバレしたとき、スコッチを逃がすことを決意したのだろう。

説得に向かったがスコッチと揉み合いになり(そのときは他の黒の組織のメンバーがいたのかもしれない)、投げ飛ばしたときにスコッチに銃を奪われた。

 

【銃を奪われた】は重大な過失だ。

ライはFBI捜査官だからこそ、銃を絶対に奪われてはならない教育を受けている。

ライ……赤井秀一は、あのとき絶対に許されないミスをしてしまった。

 

その後、ライは一度はスコッチの説得に成功する。

しかし階段から足音が聞こえてきた。

 

スコッチはとっさに色々考えただろう。

ライと協力して黒の組織のメンバーと戦うという選択肢もあった。

しかし、追ってきた他の黒の組織のメンバーが一人ではなく何人もいたらどうするのか。援軍がさらにきてしまったら。

ライを巻きこんで、上手くいけばいい。けれど上手くいかなかったら。

自分が死ぬだけならいいけれど、ライも死んでしまったら。

二人で死んで、二人から情報が漏れたら。

バーボンも危ない、公安もFBIも危ない、そんなことはできない。

 

スコッチは可能性に賭けることはせず、すぐにスマホを壊す道を選んだ。

追手はもうそこにいる。スマホだけを壊す時間はない。ライを巻きこむことはできない。銃でスマホを撃ち抜くしかない。

スコッチの目的はスマホの破壊で、死ぬ気はなかったけれど、死を選ぶしかなかった。

 

スコッチは死んだ。

ライはすぐにスコッチの意図を見抜いた。

同時に、お前はNOCの使命を全うしろという意思も受け取った。

 

そして階段を上ってきたのは、バーボンだった。

このとき、ライはバーボンをNOCだと疑っていても確証はなかった。

 

(確証があったとしても、FBIのNOCではないかぎり、ライはバーボンを信用できない。FBIにとって公安は敵の敵ではあるが、敵の敵は味方ではない。ときに協力できても、ときに協力できず敵に回ることだってある)

 

ライはバーボンの前で黒の組織の一員として喋り、行動するしかなかった。

 NOCのスコッチに銃を奪われ、NOCの情報が入っていたであろうスマホごと心臓を撃ち抜かれてしまい、どこからきたのかという手がかりを失った、なんてことはあってはならない。

このライのミスはあまりにも重大で、知られたら組織からの信頼を失うかもしれない。

ライはスコッチを粛正したことにしなければならなかった。

とっさにそのふりをしたけれど、時間がなくてつめが甘すぎた。

そしてバーボンはあまりにも優秀すぎた。あの現場で我を失うことはなく、見るべきところをしっかり見ていた。

ライに散った血と、指先から、スコッチは自決だと気づいてしまったのだ。

 

このときのバーボンにとってのライは、黒の組織の一員である。

ライがなにかしら事情があってスコッチに自決を勧めたとしても、スコッチが死んだ事実は変わらない。

降谷零はライをただ憎むだけで良かった。

 


そして、ライのNOCバレの日がくる。

ライがFBIのNOC赤井秀一』だと、バーボンの降谷零は知ることになった。

ただ純粋にライを憎んでいた降谷零は、別の感情を抱くことになる。

 

どうして、同じNOCのスコッチを助けてくれなかったんだ。

お前なら助けることができただろう。

 

何故、どうして、とゼロティーでも降谷零は言っている。

ライがスコッチを理由なく見捨てるとは思えない。ライならスコッチを助けることができた。それを選ぶ男だと信じていた。事情があってあんなことになったはずだ。

とてつもない大きな信頼があったからこそ、降谷零はそこに理由を求めた。

でもライはなにも言わない。スコッチの自決を自分がやったと見せかけている。

色々なことが重なった降谷零は、ぐちゃぐちゃな感情をライにぶつけることしかできなかったのだろう。

 

赤井秀一NOCバレした時点で、スコッチ自決の真実を隠蔽する必要はなくなった。

しかし、真実を明らかにするメリットもデメリットもない。

言う必要がないので、言わなかった。それだけだ。

 

次に降谷零の公安バレがやってくる。

赤井秀一にとってもまた、バーボンはもしかしたらと思える男で、そして実力を認めている相手だ。

スコッチとバーボンは同じ公安からきたNOCで、二人が仲間だったと知ったとき、赤井秀一は改めてスコッチを救えなかったことを後悔した。そして真実を隠すと決めた。

 

赤井秀一にとって、スコッチの自決の原因は『自分の過失』にある。

その過失は自分の銃を奪われるという、FBI捜査官としてあってはならないミスなのだ。

 バーボンの足音も原因の一つだけれど、それは過失ではなく、ただの不運である。

友人と一緒に歩いていたら、友人だけ車にはねられた。そんな不運と同じだ。

 助けようと駆けつけた降谷零の足音でスコッチが自決したなんてこと、降谷零は知らなくていい。降谷零に過失はなく、ただの不運に見舞われただけだからだ。

 

赤井秀一は、真実を隠し通すことを決めた。

スコッチ自決の責任の赤井秀一と降谷零の配分は、赤井秀一にとって、50:50ではなく、100:0である。だからバーボン=公安の潜入捜査官が確定したときの電話で、降谷零に謝罪した。アメリカ人で絶対に謝罪しない男が、わざわざ自分が悪かったと告げたのだ。

 

そして真実を中途半端に知っている降谷零は、赤井秀一の謝罪を受けて更に憎しみが募る。

降谷零がほしかったものは、「悪かった」ではなく「助けたかったが助けられなかった」という赤井秀一のたった一言の言い訳なのだ。

詳しいことは言わなくてもいい、助けたかったと思っていたのなら、それで許せた。

あなたも辛かったんですね、と終わりにできたはずだ。

 

この二人は和解できるのかどうか、真実を知った降谷零はどうなるのか。

いつかこの二人がスコッチの思い出話をしながら酒が飲む日が来てほしいと思う。

 

赤井秀一にとっての降谷零 名探偵コナン

名探偵コナンに関しては、小さいころに1話から見ていて、時々映画を見ていて、大きくなってからは遠ざかってしまい、そして純黒の悪夢が話題になって舞い戻ったというレベルのゆるふわ視聴者である。

赤井秀一というFBIが出てくる前に遠ざかったので、純黒の悪夢から赤井秀一と安室透という二人が人気だということ、因縁があることを知った。

映画自体は二度も見に行くほど楽しみ、毎年映画はチェックしようと思った。

 

そして今年の「ゼロの執行人」である。

 

純黒の悪夢の怒りに震える降谷零はある意味特別で、普段は冷静沈着な公安警察の降谷零であること。覚悟も決意も能力も半端なく高くて死ぬほど格好いいこと。

つまり安室透の女になって帰ってきた。すぐに二回目の執行を終えた。

原作に手を出し、あれこれと抜けた部分を降谷零をメインに埋めていき、降谷零が素敵すぎてたまらん!となっていたのだが……そう、あの男が立ちふさがる。

 

FBI捜査官、赤井秀一

 

降谷零に興味を持って再履修をすればするほど、この男につながっていく。

同時に、赤井秀一という男に関する謎もどんどん深まっていく。

純黒の悪夢を見たときは「そういうものだ」と思って見ていたのだが、抜けた部分が埋まれば埋まるほど、赤井秀一から降谷零への気持ちがよく分からなくなるのだ。

 

赤井秀一という男、妙に降谷零へ敬意を払っていないだろうか。

 

そもそもこの二人は、黒の組織内ではライバル関係、本職では同業者で協力関係はあっても仲良しこよしではない。

なのに純黒の悪夢赤井秀一は、降谷零を助けに行く。助けた降谷零は観覧車で殴りかかってくるけれど、赤井秀一は恩着せがましいことは言わない。それどころかちょっと嬉しそうだ。

 

降谷零という男に詳しくなればなるほど、赤井秀一のことがわからなくなる。

次に赤井秀一をメインにコナンの原作やアニメをさかのぼってみた。

 

赤井秀一とは、いけ好かないスパダリである。

スペックがえげつなくよくて、余計なことは一切言わず、どことなく影があって人を寄せ付けないというところに惹かれる女が後を絶たない。

あ~~格好良い男だちくしょう、良い男だ、本当に!

私の気持ちはジョディ先生と降谷零とシンクロした。

スパダリなのは認めるが、いけ好かない!である。でも本当に格好いい。

 

そこで知ったのだが、赤井秀一という男は「優しい」わけではない。

辛辣なことを言ったり、容赦なく物事を指摘する面も多い。

ジョディ先生相手だからかもと思ったが、妹にも口が悪かったので、多分彼女が特別というわけではなさそうだ。

 

赤井秀一という男は、なぜ降谷零を嫌わないのか。うっとうしがらないのか。

スコッチの自決を止められなかったという罪悪感からには見えない。

 

赤井秀一という男は、どことなく影がある。

なにが楽しくて生きているのだろうかと思うときがある。

逆に後悔はありすぎる男だ。

恋人の宮野明美さんを使い捨てる形になったことを悔やんでいる。黒の組織を絶対に許さないと思っている。明美さんの妹の哀ちゃんを守ろうとしている。

 

この男は、黒の組織が潰れたらどうするのだろうか。

FBIに残るという未来も充分にあるのだが、目的を果たしたからと言わんばかりに誰にも何も言わずに消えそうな「影がある」のだ。

 

そこで対比となるのが降谷零である。

降谷零も赤井秀一と匹敵する良い男である。

この男もまた、後悔がありすぎる男だ。

でも降谷零は、後悔や悲しみを命と共に燃やす男である。

彼は命を危ういほど燃やしながら生きている。「生命」の匂いがする。

 

降谷零は、崇高な志、生まれ持った優れた能力、それを研ぎ澄ませてきた努力、折れない鋼の心と燃えさかる炎を持っている。

 

赤井秀一にとっての降谷零とは、「ヒーロー」なのではないだろうか。

 

同じ立場、同じ経験、そういう同じものを沢山あるのに、でも影の匂いがする赤井秀一と、生命の匂いがする降谷零。

 

赤井秀一が生命を燃やす降谷零に憧れを持っているとしたら。

そう思うと、様々なことが腑に落ちる。

 

赤井秀一は、ヒーローを悪く言わない。

赤井秀一は、ヒーローと戦えることに喜びを感じる。

赤井秀一は、ヒーローが危機に陥ったら助けたい。そこに見返りは求めない。

 

なるほど、と思うと同時に、赤井秀一という男と飲みたくなった。

よし、我らのヒーローについて思う存分語ろう。

そんな気持ちで、次なる執行をきめてこようと思う。