名探偵コナンに関しては、小さいころに1話から見ていて、時々映画を見ていて、大きくなってからは遠ざかってしまい、そして純黒の悪夢が話題になって舞い戻ったというレベルのゆるふわ視聴者である。
赤井秀一というFBIが出てくる前に遠ざかったので、純黒の悪夢から赤井秀一と安室透という二人が人気だということ、因縁があることを知った。
映画自体は二度も見に行くほど楽しみ、毎年映画はチェックしようと思った。
そして今年の「ゼロの執行人」である。
純黒の悪夢の怒りに震える降谷零はある意味特別で、普段は冷静沈着な公安警察の降谷零であること。覚悟も決意も能力も半端なく高くて死ぬほど格好いいこと。
つまり安室透の女になって帰ってきた。すぐに二回目の執行を終えた。
原作に手を出し、あれこれと抜けた部分を降谷零をメインに埋めていき、降谷零が素敵すぎてたまらん!となっていたのだが……そう、あの男が立ちふさがる。
FBI捜査官、赤井秀一。
降谷零に興味を持って再履修をすればするほど、この男につながっていく。
同時に、赤井秀一という男に関する謎もどんどん深まっていく。
純黒の悪夢を見たときは「そういうものだ」と思って見ていたのだが、抜けた部分が埋まれば埋まるほど、赤井秀一から降谷零への気持ちがよく分からなくなるのだ。
赤井秀一という男、妙に降谷零へ敬意を払っていないだろうか。
そもそもこの二人は、黒の組織内ではライバル関係、本職では同業者で協力関係はあっても仲良しこよしではない。
なのに純黒の悪夢で赤井秀一は、降谷零を助けに行く。助けた降谷零は観覧車で殴りかかってくるけれど、赤井秀一は恩着せがましいことは言わない。それどころかちょっと嬉しそうだ。
降谷零という男に詳しくなればなるほど、赤井秀一のことがわからなくなる。
次に赤井秀一をメインにコナンの原作やアニメをさかのぼってみた。
スペックがえげつなくよくて、余計なことは一切言わず、どことなく影があって人を寄せ付けないというところに惹かれる女が後を絶たない。
あ~~格好良い男だちくしょう、良い男だ、本当に!
私の気持ちはジョディ先生と降谷零とシンクロした。
スパダリなのは認めるが、いけ好かない!である。でも本当に格好いい。
そこで知ったのだが、赤井秀一という男は「優しい」わけではない。
辛辣なことを言ったり、容赦なく物事を指摘する面も多い。
ジョディ先生相手だからかもと思ったが、妹にも口が悪かったので、多分彼女が特別というわけではなさそうだ。
赤井秀一という男は、なぜ降谷零を嫌わないのか。うっとうしがらないのか。
スコッチの自決を止められなかったという罪悪感からには見えない。
赤井秀一という男は、どことなく影がある。
なにが楽しくて生きているのだろうかと思うときがある。
逆に後悔はありすぎる男だ。
恋人の宮野明美さんを使い捨てる形になったことを悔やんでいる。黒の組織を絶対に許さないと思っている。明美さんの妹の哀ちゃんを守ろうとしている。
この男は、黒の組織が潰れたらどうするのだろうか。
FBIに残るという未来も充分にあるのだが、目的を果たしたからと言わんばかりに誰にも何も言わずに消えそうな「影がある」のだ。
そこで対比となるのが降谷零である。
降谷零も赤井秀一と匹敵する良い男である。
この男もまた、後悔がありすぎる男だ。
でも降谷零は、後悔や悲しみを命と共に燃やす男である。
彼は命を危ういほど燃やしながら生きている。「生命」の匂いがする。
降谷零は、崇高な志、生まれ持った優れた能力、それを研ぎ澄ませてきた努力、折れない鋼の心と燃えさかる炎を持っている。
赤井秀一にとっての降谷零とは、「ヒーロー」なのではないだろうか。
同じ立場、同じ経験、そういう同じものを沢山あるのに、でも影の匂いがする赤井秀一と、生命の匂いがする降谷零。
赤井秀一が生命を燃やす降谷零に憧れを持っているとしたら。
そう思うと、様々なことが腑に落ちる。
赤井秀一は、ヒーローを悪く言わない。
赤井秀一は、ヒーローと戦えることに喜びを感じる。
赤井秀一は、ヒーローが危機に陥ったら助けたい。そこに見返りは求めない。
なるほど、と思うと同時に、赤井秀一という男と飲みたくなった。
よし、我らのヒーローについて思う存分語ろう。
そんな気持ちで、次なる執行をきめてこようと思う。